「なぁ……」
「うん?」
「大空を飛びたいと思ったこと、あるか?」
「うん、そうだね……もちろんあるよ」
「俺もある。でも、俺達は飛べないんだよな」
「まあね」
 飛びたいと願うことは簡単だ。でも、実際に飛ぶことはできない。
「あいつらはうらやましいよな」
「うん」
 空を見上げてみる。
 羽をめいっぱいに広げて、自由に大空を泳ぎ回る鳥達の姿が、そこにはあった。
「何で俺達は飛べないんだろうな」
「必要がなかったからだね」
「どういうことだよ?」
「進化の過程の話さ」
 そう、必要がないから、僕達は空を飛ぶことも許されない。
 飛びたいとどんなに強く思っても、必要がないというだけで、その思いは届かない。
「じゃあよ、必要があれば、俺達もいずれ、自力で空を飛べるようになるのか?」
「さぁ、どうだろうね? でも、大昔からずっと、僕達は飛ぶことを必要としてこなかったんだ。たぶん、これから先もそれは変わらないんじゃないかな」
「そっか……」
 何だか寂しそうだ。それほどまでに、こいつは空を飛びたいと思っているのだろうか。
 僕はもう一度空を見上げた。
 鳥達とは別に、大空を舞うものの姿がある。
「ほら、あれ」
「あん?」
「人間だって、自力では空は飛べない。でも、ああやって空を飛ぶ技術を開発したんだ」
「あいつらは、空を飛ぶ必要があったのか?」
「たぶんね」
 人間は空を飛べない、でもその代わりに、飛行機を開発した。それはきっと、彼らに取って必要なことだったからだと思う。
 僕達ペンギンの祖先は、空を飛んでいた。それはやはり必要があったからだろう。
 今の僕達にも羽はある。でもこれは、空を飛ぶためには使われない。
「……腹減ったな」
「そうだね、ご飯を採りに行こうか」
 僕達は羽をバタつかせて、海に飛び込んだ。
 大空を自由に飛び回る代わりに、大海原を自由に泳ぎ回る。
 それが、今の僕達に取って必要なこと。
 そして、羽の役割。