私は待っている。
 待っているって、何を?
 それも私は待っている。
 私が何を待っているのか、それを私に教えてくれる何かがやって来るのを、私は待っている。
 待つのは、とても怖い。
 本当は何も待っていないのかもしれない。いつかやって来るはずだという私の思いは、ただの幻想でしかないのかもしれない。
 そう思うと、怖い。
 待つ意味を失ってしまうから。
 今の私が全て否定されてしまうから。
 幻想かどうかなんて、私には分からない。いつ分かるのかも、分からない。
 私の待っているものは、いつ来るのか分からないから。
 だから、信じて待ち続けるしかない。
 本当は、怖くてたまらない。逃げ出したい。
 でも、逃げるわけにはいかない。だから私は、自分の体をぎゅっと抱きしめる。
 逃げ出さないように、力いっぱい、抱きしめる。
 体がつぶれてしまうのではないかってくらいに強く強く抱きしめると、少しだけ恐怖が和らぐ。たぶん、痛みが恐怖を肩代わりしてくれているからだろう。痛みが強ければ強いほど、怖さは薄れる。
 いつまで待てばいいのかも分からない。いつから待っていたのかも分からない。
 何のために待ち続けるのかも、分からない。
 それを考えると、また恐怖が襲ってくる。
 考えないように、何も考えないように。
 心を空っぽにして、待つ。
 待つ。
 待つ――。

 声が聞こえた。
「もう待たなくていいんだよ」
 恐怖が消えた。痛みも消えた。
 ああ、そうか。
 私は、これを待っていたんだ。
 待つ恐怖から私を解放してくれる、その一言を。