世の中、足りない知識や技術は、ある程度は金で買える。
 例えば、自分の持っている電子機器が故障した場合、知識や技術があれば自らの手でそれを直すことが可能だ。しかしそれがなくても、お金を払って専門家に直して貰えば、壊れた電子機器がもう一度使えるようになるという点では、どちらも価値は同じだ。
 後者の場合は、つまりは自分にない知識や技術を買っているわけだ。だから早い話、何の知識もなくたって湯水のごとくあふれる資金を持っていれば、身の回りのことで大きく困ることはたいしてないだろう。最低限、悪い奴に騙されないだけの知識くらいは必要かもしれないが。
 ちなみに僕は、お金持ちではない。しかしそれをカバー出来るだけの知識や技術があるかと言われたら、残念ながらそれもない。
 僕みたいな、足りない知識や技術を金で買うことが出来ない奴はどうすれば良いのだろうか。解決策は大きく分けて二つある。あえて言葉にするまでもないことだが、要は知識や技術を身につけるか、豊富な財力を手に入れるかだ。どちらか一つが手に入れば、もう一方はカバー出来る。知識や技術が身につけば自分で何とか出来る場面が増えるから、その分総合的な出費が減り、そこまで金持ちじゃなくても困ることは少なくなるだろう。パソコンが壊れた時、高いお金を払って修理に出したり新しく買い替えたりしなくても良くなる。逆に豊富なお金を手にすることが出来れば、修理は他人に任せれば良い。
 しかし、問題はその解決方法だ。
 知識や技術を身につける為には、先行投資が必要になってくる。知識を身につける為に参考文献を手に入れたりとか、そういう出費はある程度は避けられない。お金がないから知識や技術を身につけたいのに、それを身につける為にまずお金が必要というのは、本末転倒のような気がしないでもない。
 ではお金を手に入れる方を選べば良いのかと言うと、これもそう簡単なものではない。例えば、勤め先で自分の実力をアピールして出世や昇給を目指そうと思ったら、いろいろな知識や技術が必要になってくる。つまり、豊富な財産を築こうと思ったら、それだけ知識や技術も広く深く掘り下げていかなければならない。
 一体どうすれば良いのだろう。知識や技術を身につける為には、自己投資にお金が必要になるし、そのお金を大量に手に入れる為には、それに見合うだけの知識や技術を身につけなければいけない。卵が先か鶏が先か、堂々巡りだ。
 知識や技術か、金か、そのどちらを選択しても、それを手に入れる前にもう一方の選択肢が立ちはだかる。となると、僕のような人間が選べる選択肢は、今現在の可能な出費でそれに見合うだけの知識や技術を身につけ、それを元にお金を稼ぎ、お金を稼いだらそれをまた自己投資して――というのを繰り返すことくらいか。
 僕みたいなやつを、貧乏暇なしと言うのかもしれない。自己投資を繰り返しているうちはなかなかお金に余裕が出来ないだろうし、知識や技術を身につける為に勉強しているうちは時間にもなかなか余裕が出来ないだろうから。