色は、とても不思議だ。
 例えば、赤。
 赤は、暖色と呼ばれる色の一つ。暖色とは、言葉の通り、暖かいイメージを与える色だ。
 続いて、青。
 青は、寒色と呼ばれる色の一つ。こちらも言葉の通り、寒いイメージを与える色だ。
 どちらも、分からなくはない。僕自身、赤という色からは活発で情熱的な印象を受けるし、一方で青という色からは静穏で落ち着いた印象を受ける。赤と青を見比べたら、赤は温度が高くて暖かい、あるいは熱いと思うし、青は温度が低くて冷たいと、何となく思う。火の暖かさ、水の冷たさがそのまま赤と青の印象に結び付いているのもあるだろう。
 赤が熱く燃えたぎっているように思えるのに対し、青は深く沈みこむように思えるのも事実だ。これはたぶん、海の影響が大きいんだろうと思う。
 でも、よくよく考えてみると、炎の色というのは、赤よりも青の方が温度は高い。つまり、実は赤よりも青の方が熱いということだ。しかしその事実を知った今でも、僕の中で赤と青に対する印象は変わっていない。こういうのも固定観念なのだろうか。
 温度が高いことは知っていても、青い炎からはやはり静かな印象を受ける。赤い炎の方が活発に見える。
 ところで、紫というのは寒色に含まれる。僕も、暖色か寒色かのどちらかに分類しろと言われたら、たぶん紫は寒色に分類してしまう。何となく紫には暗いイメージがある。暗くてどこか神秘的な、少なくとも活発な印象は受けない。
 でも紫というのは、赤と青の中間色だ。混合色でもいいが、とにかく、赤と青を混ぜ合わせた色が紫だ。
 暖色の赤と寒色の青、この二つを均等に混ぜたら、どちらにも分類されない中立の色ができ上がるんじゃないだろうか。でも紫は寒色。
 一口に紫と言っても、色の種類はいくつもある。
 赤みが強い、いわゆる赤紫。マゼンタとかフクシャという色は、一般に赤紫系統の色だ。一方で青みが強い青紫色も、もちろんある。菫色とかウィステリアなんていう色は、青紫系統だ。
 でもマゼンタであっても、暖色というイメージはない。やはり寒色だ。暖色と寒色では、寒色の方が強いということなのだろうか。
 つまり、人はネガティブな方に引っ張られやすいのではないかということ。もしそうでなかったら、紫には暖色でも寒色でもないイメージを持つはずだ。
 もちろん、色のイメージは万人共通ではない。一般的に赤はプラスで青はマイナスのイメージがあるけど、そう思わない人だって、中にはいるだろう。
 色なんて、特に名称が決められていない微妙な中間色なども含めれば、無数に存在する。同時に、それぞれの色に対するイメージもまた、無限に存在するだろう。
 色は、この世で最もエントロピーの高い存在なのかもしれない。