タイムリミット

 マサルがやられた。
 一番強くて頼りになる奴だったのに。
 残りのメンバーを全員合わせても、マサル一人の方が強いくらいだった。
 そのマサルが、まさか真っ先にやられてしまうなんて――。
「くそっ……これからどうする……」
 答えるものはいない。でも、今できることなんていくつもない。これからどうするべきか、僕に選べる選択肢は、精々これくらいだ。
「残念だけど、逃げまくるしかないな」
 三十六計何とやらなんて言葉もある。
 きっと、これが最良の手段だ。
 真っ向から戦うなんて無理。そんなことをしたら、マサルだけではなく、みんなもやられてしまうだろう。
 今、全滅するわけにはいかない。ここまでかなりの時間を費やして頑張ってきたというのに、ここで全滅したら、全てが水の泡だ。それだけは避けなければならない。
 緊張が走る。
 僕は、常に逃げる選択をした。マサルがいない今、残りのメンバーでこの場を戦い抜くことは不可能。ゆえに、逃げるのみ。
 でも、敵もしつこい。それに素早い。なかなか逃げられない場面も多かった。
 そうこうしているうちに、コウスケもやられてしまった。
 何てことだ。
 このままでは、本当に全滅してしまう。
「一体どうするよ……」
 何か良い方法はないものか。
 はっきり言って、残された時間も決して多くはない。むしろ、少ない。
「何か、この状況を打破できる良い道具とかないのか」
 今持っている道具を確認してみたものの、目ぼしいものはない。
 このままではまずい。
 エミコだって、いつやられてしまうか分かったものじゃない。
 何せ、すでにギリギリの状態だ。
 時間もギリギリ、体力もギリギリ。
 そう思っていた矢先、何とか洞窟を抜けることができた。
「何とか抜けれたか。長かったぁ……」
 僕が安心して一息ついていると、下から僕を呼ぶ声が聞こえた。
「ご飯できたわよ!」
 フィールドに出られたので、僕は数時間ぶりにセーブをして、ゲームの電源を切った。
 この続きは、夕飯の後で。

天秤

盗られたもの、盗られてないもの

ドングリの背比べ

時を告げる鐘の音

届かぬ想像

敵陣突破