プラスワン

 どこで間違った?
 そもそもこれは間違いなのか?
 学校に来てみると誰もいないじゃないか。
 早く来すぎたのか? いや、それもない。
 時計は、既に八時を回っている。全員が揃っていないにしても、生徒や教師の大半は、既に校内に姿を現していていいはずだ。
 どうして誰もいないんだ?
 取り敢えず、一度家に帰るか。
 ここにいても埒が明かない。誰かに連絡の一つも取りたいところだが、俺は携帯電話というものを持っていない。電話をするなら家に帰らねば。
 俺はダッシュで家に帰った。
 家の中には誰もいない。母親も出かけてしまったようだ。まあ、今朝俺が起きた時点で、既に家の中には誰もいなかったが。
 まあいい、それよりも電話だ。
 電話の子機を手に取り、俺は、記憶している友達の携帯の番号をプッシュした。
 聞き慣れたコール音。しかし、その次に出るはずの、コール音よりもよっぽど聞き慣れている友達の声は、聞こえなかった。代わりに、留守番電話を告げるアナウンスが流れる。
 まだ寝てるのか。
 別の友達にもかけてみたが、こっちはコール音すら鳴らなかった。そう言えば、あいつは寝ている間は携帯の電源を切ってるとか言ってたな。じゃあ、こいつもまだ寝てるのか。
 みんな、何やってんだ? 何で登校日なのに、そんなに悠々と寝てやがる。
 もしかして、俺、異次元にでも迷い込んだか?
 だから携帯も繋がらないし、かかっても相手が電話に出ないのか? 家に誰もいないのも、俺一人だけがこの異次元世界に来たからなのか? これが噂のパラレルワールドとかいうやつだろうか。
 はっ、まさか、そんなSFじゃあるまいし。
 俺は気分を落ち着ける為に、一度自分の部屋に戻った。部屋は間違いなく毎日見慣れている俺の部屋だ。
 何となく部屋全体を見回す。すると、カレンダーが目に付いた。
「……あ」
 すっかり忘れてた。今年は、閏年だったんだ。
 登校日――正確には卒業式――は明日、つまり三月一日だ。
 というわけで、俺はしなくていい早起きをしてしまった為に削られた睡眠時間を取り戻す為に、例年より余分にある今日という日を、一日睡眠に使うことにした。

美女は野獣

不確定性の産物

欲しいもの ≠ 必要なもの

走り続ける運命