メビウスの輪を走り続ける

 表と裏。
 光と影。
 男と女。
 この世は、二分化されたものが多い。
 どうして二分化されなければならなかったのか、そんなことは知らない。
 二分化されることが最適だったのか、そんなことも知らない。
 一つ言えることは、こうしている今も、俺は二分化された状態の真っ只中にいるってことだ。
 追う者と追われる者。
 そして問題なのは、追われる立場だったはずが、いつの間にか追う立場に変わっていたりすることだ。
 まるで、メビウスの輪だ。
 表だと思っていたらいつの間にか裏になっている。そもそも、どっちが表でどっちが裏か分からないのが、メビウスの輪だ。
 境界条件は不確定。
 それに比べたら、境界条件がはっきりしている分、今の俺の状態の方がマシか。
 追う者と追われる者。
 立場は対極だが、やることは同じ。
 逃げるために走るか、捕まえるために走るか、その違いがあるだけで、どちらの場合でも、ただひたすらに、走る。
 走る、走る走る。
 追う者になって走り、追われる者になってまた走る。再び追う者に戻って走り、それがまた追われる者になって――。
 永遠と繰り返されるループ。
 まるで、メビウスの輪だ。
 どこまで走っても、終わりが存在しない。気付いたらスタート地点に戻って、また同じ軌道を走る。そもそも、無限を記号で表したものこそが、メビウスの輪だ。
 まさかこんなときに、メビウスの輪について真剣に考えるなんて――。
 正直、考え事をしている場合じゃない。
 そんなことをしている間に、捕まってしまう。
 そうなったら、俺はまた追う者に逆戻り――。
「はい、タッチ」
「ぐあー、また俺が鬼かよぉ」
「十秒間そこから動いちゃダメだからね」
 もう日が暮れようとしてるってのに、いつになったら終わるんだ、この鬼ごっこは。

待つ意味を

報い