あかつきのお宿

北風と太陽ってお話、あるじゃないですか。ちゃんと読んだことはないって人も、およそどんな内容かってのは、耳にしたことがあると思うんですよ。

一応、どんな内容かってのを簡潔に三行くらいで内容をまとめると……。



北風と太陽が、旅人の上着を脱がす勝負をすることになった
北風は強風で上着を吹き飛ばす作戦に出たが、あえなく失敗
太陽は暑さで旅人が自ら服を脱ぐよう仕向けて、見事に勝利



もうちょっと尾ひれがついてたりする場合もあるみたいですが、ようは、こういう場合は力づくで無理矢理脱がそうったって上手くいくもんじゃないんだよってことを、北風さんと太陽さんが身をもって教えてくれるっつー話ですね。

アメとムチで言うと、北風がムチで太陽がアメ、みたいな解釈をするのが一般的ですかね。僕みたいな暑いのが極度に苦手な奴に言わせれば、太陽作戦で脱がされるのはアメを与えられてるというよりもムチで叩かれてるような感覚ですがww

この話の教訓としては、人を動かすのは強引に押さえつけるようなやり方ではなく、優しい態度で接することだってことを言いたいわけですよね。叱りつけるよりも褒めて伸ばせ、的な。無理矢理動かそうとするのではなく自ら動くように仕向けるのが、良いやり方だと。

でもね、これは北風と太陽が勝負してるから浮き出る理論であって、当たり前の話なんですが、人を動かすのはこの二択に絞られるわけではないんですよ。

むしろ自ら動くように仕向けるのなら、もっと効果的な方法があるはずなんですよ。



例えば、北風と太陽の対決に、絶世の美女が参戦したら、戦局はガラッと変わるはず。

北風は、強風で上着を吹き飛ばそうとする
太陽は、旅人を暑がらせて上着を脱ぐように仕向ける
そして美女は、まず自らが服を脱いで旅人を誘惑する

こうなりゃもう、ぶっちゃけ美女が圧倒的に有利ですよ。全裸になってちょいと誘惑したら、旅人なんてイチコロですよ。長い旅を続けていると、なかなか性欲を処理する機会もないですからね。夜な夜な自分で慰める日々が続けば、そのうち美女の幻影くらいは見えるようになるかもしれない。そんな旅人の前に、本物の美女が現れて、しかもおもむろに服まで脱ぎ出すんですから、そりゃ一瞬で勝負が決まってしまいますよ。ルパン脱ぎで、上着どころか下着も一瞬で脱いじゃいますよ。ぴょーんって。

つまり、人を動かすには、優しい態度で接することも大事だけど、本能や欲求を刺激する方がより効果的だと。人間、内なる欲求には結局勝てないんだと。

そういうことを言ってるわけではないんです。

ふっふーん。甘い甘い。

「裸の美女なんて話を持ち出してる以上、結局はそういう性欲的なことを言ってるだけなんだろ？　下世話な話なんだろ？」なーんてことを思ったそこの君は、残念ながら脳内がピンク色になっているようだ。脳内メーカーをやったら全部『欲』で埋め尽くされちゃってる。



ポイントは、美女が『まず自らが服を脱いで』ってところよ。

つまり、人を動かすには、まず自分が率先して手本を示すのが大事ってこと。「この人がやるなら自分も」って思われるような人間になるのが大事ってことよ。そうすれば、自分が動けばみんなも自ら動いてくれるようになる。

いくら優しい言葉をかけてアメを与えたところで、自分がなーんにもしない人間だったら、あるいは周りからあまり良く思われていない人間だったら、人はついてこない。アメをあげるなら、まずは「この人からアメがもらえるなら頑張ろう」って思われるような人間にならなきゃねってことですわ。

そういう人間になれたら、北風も太陽も美女も必要ない。一言「脱いで」ってお願いするだけで、きっとみんな、喜んで上着を脱いでくれるはず。

そんな人間を目指しましょうってのが、今回の本当の教訓ってとこですかねー。






だから僕もね、目指そうと思うわけですよ。

一言「脱いで」ってお願いするだけで、世の中の美女がみんな喜んで上着も下着も脱いでくれる、そんな男を……。