お姫様について語り明かそうぜ

この記事はだいぶ前に書かれたものなので情報が古いかもしれません
あなたはどのお姫様を選ぶ?

この記事を三行にまとめると

今日語りたいのは「比売」あるいは「毘売」についてです
うん、よし。こりゃほとんど同じだわ
僕がしょっちゅう迷うのは「ほしょう」と「たいせい」ですね
「お姫様と言えば?」って質問された時、パッと思い浮かぶのって誰でしょう? ゲームや漫画のキャラなら結構いるような気もするのですが……アリーナ姫とか。今なら大河ドラマの影響で井伊直虎とかもランクインするかもですね。あの人は姫ってのとはちょっと違うのかしら。

僕の場合、パッと思い浮かぶのは魔装機神に出てくるセニアとモニカですかね。

何にせよ世の中にはいろんなお姫様がいらっしゃいますが、今日語りたいのはそういうお姫様の話ではなくて、「比売」あるいは「毘売」についてです。

比売と毘売はどっちも読み方は「ヒメ」で、意味合いとしては姫と同じようなものだと言われています。日本の神話でたびたび見かける字です。「コノハナサクヤヒメ」とか聞いたことないでしょうか? コノハナサクヤヒメというのは神話に出てくる女神様で、僕もあまり詳しくはないのですが、とりあえず美人の女神様です。初代天皇である神武天皇のひいおばあちゃんにあたる人物とされています。

コノハナサクヤヒメは漢字で書くと「木花咲耶姫」などと書かれることが多いそうなのですが、古事記では「木花之佐久夜毘売」と書かれます。姫の部分が毘売になっていますね。

彼女には「イワナガヒメ」というお姉さんがいます。この人も「岩長姫」「石長姫」と書かれるのが一般的ですが、古事記では「石長比売」と書かれます。姫が「比売」になってます。

他にも「八上比売(やがみひめ)」とか「須勢理毘売(すせりびめ)」とか、神話では姫の字に毘売や比売が使われるのですが、ふと気になったのは「毘売と比売には何か違いがあるのかな?」という点です。ちゃんと読み込んでないせいもあるかもしれないんですが、どうも両者の違いってはっきりとは書かれてないっぽいんですよね。でも違いがないなら同じ字でいいわけだし……何か理由があるんじゃないかって気がしないでもない。勝手な偏見ですが、昔の方が今よりも漢字にちゃんと意味を求めていたように思うんですよ。



「毘」と「比」のそれぞれの意味を調べてみると、毘の方は助けるという意味があり、比の方は比べるという意味があるみたいです。そこから推測すると「毘売」は誰かを助ける立場にいた人、内助の功みたいに夫を助ける良き妻だった人で、「比売」は誰かと比べられる立場にいた人ってことになるのかな?

サクヤヒメは「瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)」という神様と結婚します。その時、姉のイワナガヒメも一緒に嫁ごうとしたのですが、「お前は好みじゃない」的なことを言われて追い返されてしまい、残念ながら結婚できませんでした。

ニニギノミコトの妻になったサクヤヒメ(木花之佐久夜毘売)と、その彼女と比べられて妻になれなかったイワナガヒメ(石長比売)。そう考えるとそれぞれの字の違いにも意味合いが出てくるようなこないような……?



ヤガミヒメとスセリビメはどちらも大国主命(おおくにぬしのみこと)という人の妻になった女神です。オオクニヌシってのは神話ではわりと有名人のような気もしますが、うーんとそうですね……イナバの白ウサギって昔話なら聞いたことがある人も多いですかね? 海を渡るためにサメ(ワニという説もある)をだました結果、皮を食いちぎられてしまったというなかなかにスプラッタな感じの昔話です。その皮をはがされてしまったウサギを助けた人がオオクニヌシです。

オオクニヌシはウサギを助けた後にヤガミヒメと結婚し、さらに何やかんやとあった後にスセリビメとも結婚します。重婚ってやつですね。どちらも妻になった以上、サクヤヒメとイワナガヒメのような関係性ってことにはならないんですが……でも正妻になったのは毘売の字が使われているスセリビメ(須勢理毘売)の方なので、ヤガミヒメ(八上比売)はそれと比べられる存在になったと考えられなくもないかもしれない。



話は変わりますが、比売と毘売のように意味合いはほとんど一緒なのに字が微妙に違うもので似たような使い方をするもので、何か思いつくものありません? うむ、今キミが思いついたそれが正解だ!

そう、「王女」と「皇女」です。

王と皇の違いは、王という字の上に白という字が乗っているかどうかですよね。「比」と「毘」も、比という字の上に田が乗っているかどうかの違いだし、何か似てますね。王女や皇女もプリンセス的な要素ありますし。

もしかしたら王女と皇女の違いをはっきりとできれば、その応用で比売と毘売の違いも説明できるかもしれない。

では王女と皇女の違いはどこにあるかってーと……辞書に載ってる意味をざっくりまとめるとこんな感じです。

王女・・・国王・帝王の娘。皇女。
皇女・・・天皇・皇帝の娘。

うん、よし。こりゃほとんど同じだわ。国王か天皇かの違いは見られますが……つまり親の身分や肩書きによって違いがあるって考えたら良いのでしょうか。

でもなあ……ヤガミヒメとスセリビメはともかく、サクヤヒメとイワナガヒメは同じ親を持つ姉妹だからなあ……この理論は応用できなさそうです。

うーん、この説は弱いですかね……?



というわけで、結論としては比売と毘売の違いはやっぱりよく分かりませんでした。もっと他の説も考えれば何か見えるかもしれないけど。

しかし漢字の違いって難しいですよね。例えば「かたい」って言葉一つ取っても、「固い」「硬い」「堅い」とかあるし、どう使い分けたらええねんって感じじゃない? 「あたまがかたい」のかたいはどれなのかとか。

僕がしょっちゅう迷うのは「ほしょう」と「たいせい」ですね。文章を書いているとほぼ毎回「保証」と「保障」の使い分けに迷います。たいせいも、「体勢」と「態勢」にいっつも迷う。状況によっては「体制」も含む。先日小説を出版した時も出版社の方が原稿をチェックしてくれたんですけど、「ここは体勢なの? 態勢じゃない?」みたいなツッコミが実際に何箇所かありました。

漢字は実に奥が深いです。そりゃあ厚切りジェイソンも叫びたくなりますよね。日本人の我々にとっても漢字は難しいですもん。ホワーイジャパニーズピーポー!!



現実にお姫様的な人と会ったことはありませんが、もし間近で対面する機会があったら、オーラに圧倒されて緊張でかたくなってしまうのか、あまりの美しさに欲情してかたくなってしまうのか……どっちでしょうね。

ところでこの場合のかたいは固い? それとも硬い?
 もしかしたら何か関連しているかも? 
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